坪内祐三(著)『大相撲新世紀 2005-2011』
以前、『文藝春秋(2011年6月1日号)』で「人声天語 ― 私も蒼国来を支援する」を執筆された文芸評論家の坪内祐三さんが、『大相撲新世紀 2005-2011』という本を出版されました。
- ISBN:9784569801797
- PHP新書793[PHP出版の販売サイト]
- 定価740円+税[amazon.co.jp]
本書は、大相撲の「見届け人」を自負される著者が、2005年から現在まで、それぞれ当時に執筆なさったエッセイなどを時系列上に再編したもので、相撲愛にあふれた、かつ批判的な視点から、大相撲界を常に鋭く分析しつづけた論考がつづきます。
大相撲界激動の6年間をリアルタイムで追った本書を通読することによって、今日の相撲界の社会での位置づけが見えてくるだけでなく、この大相撲八百長問題とは何なのか、そしてさらに蒼国来がこの問題に巻き込まれるに至ったのはなぜか、順を追って理解することができる一冊です(「私も蒼国来を支援する」も所収)。
それら各論は、起きた事象を伝える報道としてではなく、とことん相撲に「はまった」著者の想いとして述べられているだけに(当事者ら自身の考えとの一致云々を超えて)、意味も理由もあるひとつの物語として読者の心に届くものとなっています。筆致は軽妙で読みやすいが、提起されている内容は相撲界にとって重い。
蒼国来が解雇されて1年が経ち、裁判も佳境を迎えた今、本書を読んで、改めてこの蒼国来の戦いの意義を噛み締めているところです。(事務局)